“白い岩”の町
気がつけばもう春である。
バンクーバーでも桜は結構な場所で見ることができ、日本にいるときと同じように桜で春を感じることができる。
春はあけぼの、小錦、貴乃花とバンクーバーも美しい季節になってきた。
私もバンクーバーを去るまであと1ヶ月と少し。
実は周りのみんなが訪れていて私は1度も行ったことがない場所があった。
それは、「ホワイトロック」という町である。
その場所は、どうやらアメリカとの国境にある町らしく、
何があるのかというと「白い岩」がビーチにあるという。
それだけを聞くと、多くの人がこぞって「白い岩だけを見に行く」のか・・・
と疑問に感じた。
何が面白いのか。
「うわ〜こんなところにこんな大きな白い岩がある!!!」
「触れるんだってすごくない?」
「この大きな白い岩の前で写真撮ろうよ」
「こんな大きい白い岩を近くで見れるなんて幸せだね」
「白い大きな岩を見て一生の思い出になるよ」
「白い大きな岩を見て感動して泣きそう」
とはならない。
まぁ触ったり、写真に収めることはするだろうが、おそらく5分で終わる。
そんなものの為に2時間近くもかけてその町に行く意味はあるのだろうか。
と考えながら電車とバスに揺られ、2時間後。
私はホワイトロックにいた。
しかも久しぶりの登場、「村上」と一緒にである。
村上とは地獄のホームステイを終えてから、一度も会わなかった。
厳密にいうと一度会ったが、カフェで5秒挨拶しただけだった。
村上は道中、日本にいる彼女とのなんやかんや、語学学校のなんやかんや等、特に発展しない話を2時間続けてくれた。相変わらずちょっと面白いやつだが真面目で、良く言えば「関わりやすい性格」である。悪くは言わないでおく。
さて、到着してまず先に向かったのは、「White Rock The Pier」という桟橋である。
どうやらカナダで1番長い桟橋らしく、かなり多くの人が桟橋の先端まで歩いて行っていた。
風に靡く(なびく)村上のロングヘアを横目に桟橋を歩く。先に何があるかというと何もないが、桟橋の下まで海が広がっていればそれなりの光景になっただろう。残念ながら引くほどの引き潮で砂の上にある橋をただ歩いているだけだったが、先に見えるアメリカや太平洋を見渡せ気持ちが良かった。
そして、ついにお待ちかね、私たちはこの後「ホワイトロック」に向かうのである。
ご覧いただきたい。
これが私たちが夢に見た「ホワイトロック」である。
感想を言おう。
「うん」
この言葉に尽きるのである。
私の推測通り、ホワイトロックに遊びにきている観光客はもちろん「ホワイトロック」を一目見ようとこの場所を必ず訪れるのだが、みんなほぼ同じ反応だった。
写真の通り数人の子供たちが無邪気によじ登ったり走り回って遊んでいるのは非常に微笑ましい限りだが、1番悲しかったのは何よりも「ペンキ塗りのホワイト」だと知った時だった。
写真でもわかると思うが、ところどころ普通の岩の色の部分がある。これは塗料が剥げた場所であり、定期的に塗り直しているという。
そんなに有名になりたかったのか。
どうせなら金色の「ゴールデンロック」とかにした方が縁起も良さそうじゃないか。
実際、いろんなサイトでこの岩がどういう経緯で存在しているのか調べたが、先住民の神話で「この岩が存在する場所では自分たちで新しい民族を作れるとした」とされているらしいが、岩の色は何にも関わっていない。
ホワイトロック市民の方々、今からでも遅くない。
「ゴールデンロック」に変更したほうがファビュラスで運気の上がる感じがするぞ。
もうメインはこれで終わりである。
まだ午後1時。
想像しているよりもつまらない岩だった。
とりあえずこの気持ちを晴らすためにランチを食べに向かった。
色々調べたが、フィッシュ&チップスが有名だと書いてある記事が多く、海沿いに並んでいるお店のうち2番目くらいに混んでいるお店を選んだ。
定員はカジュアルな対応で海沿いらしい感じ。
肝心の味は、まぁ出来立ての揚げ物はなんでもうまいので、美味しいとしておこう。
確実に言えることはホワイトロックよりはるかに気持ちが高揚していた。
ビールとフィッシュ&チップスに、村上のつまみにならない話を聞き、1時間ゆっくり過ごした。
腹ごしらえをしたら続いてはデザート。
訪れたのはここも人気そうなジェラートショップ。
店内は常に混雑しており、20分ほど並んで入店することができた。
正直に話そうと思うが、このブログを書いている今、私自身が何を頼んだか一切思い出せないので読者の皆様に味は想像してもらうとする。
とりあえず美味かったのは間違いない。
ところが一緒に並んでいた村上は特に甘いものが好きではないとか言って食べなかった。
本当は食べたかったくせに、何をかっこつけてるんだ。
そう思っていると軒先の頭おかしい牛もこんな表情をしていた。
「狂いながら搾られた私たちの乳をしょーもない理由で拒否してんじゃねぇ村上」と言っている。
しょーもないぞ村上。
さて、もうそろそろお腹もいっぱいだし行くところもないので少しブラブラしながら帰ることにした。
気がつけばもう夕方で春先だが冷え込んできた。
ゆっくりとバス停まで歩き、2階建てのバスが待機していた。
2階の先頭に座ったら、ここにきて村上のテンションが上がり、
「2階建てバスの先頭とかめっちゃ嬉しい」などと1人はしゃいでいた。
なぜ今のタイミングで1番楽しそうにするのか。
最後までよくわからないやつだなと感じながら、私は“Crazy Cow”の顔になり、
そのまま寝落ちして村上を1人泳がせておいた。
総括すれば、ホワイトロックという町は素敵だが1日あれば十分であり、「ホワイトロック」は10分で事足りた。