シェアハウスの暮らし方
シェアハウスと聞いてイメージするのはどんなことだろうか。
例えば、男女3〜5人の日本人オンリー混合シェアハウスであれば、共有ルームではみんなでワイワイやっているが、実はそのうちの2人が内緒で付き合っていて、突然に「俺たち2人で暮らすわ!」とか言って出ていき、それぞれが絶縁状態になったり・・・
例えば、女性3人の国籍混合シェアハウスであれば、お互いの国の郷土料理や習慣を分かち合って楽しく過ごすことができたり・・・
例えば、男性4人の国籍混合シェアハウスであれば、「あいつの後のトイレは悪臭が酷い」とか「なんでお前はそんなに毛が抜けるんだ」とか、いろいろ問題が簡単に起こりそうだったり・・・
全ては私の妄想だが、シェアハウスに対しての抵抗感はなかなか拭えなかった。
なぜなら今まで家族以外の誰かと一緒に暮らしたことがないからである。
そんな不安を抱きながら家を探してわかったことは、シェアハウスにもいろいろ種類があること。
①自分の部屋があり、自分専用のお風呂・キッチン・トイレ・ランドリーが全て揃っていて、家だけを共有する。
②自分の部屋があるが、お風呂・キッチン・トイレ・ランドリー等は共有スペースで使う。
③寝室も誰かと共有し、プライベートが何も確保されていない。
他にもいろんなパターンがあるが、大体は上記3つに区別され、①の方がもちろん家賃も高い。
私は、①にあこがれを抱きつつ、②あたりでそれなりの値段であればいいかなぁと思っていた。
そして、いろんなタイプのシェアハウスにメッセージを送ったが、ほとんど返事がなく、最初に返事をくれたシェアハウスに内見に行き、あまりにも心地よくて安い値段なので、すぐ決めてしまったのである。
ここからは、シェアハウスでの暮らしを紹介するが、なんせ条件が良すぎるため、想像しているようなあり得ない出来事とかは無い。
ただ、穏やかに5ヶ月間暮らしただけの記録である。
① ご飯を作る
日本とは違い、カナダで外食するには、日本よりも高い金額の料理を注文し、チップ(だいたいお会計の10〜15%)も支払わなければならない。
ファストフードならチップはいらない時が多いが、レストランだとだいたいチップである。
「まぁ普通かな」くらいの味でも日本よりはるかに高いお会計を請求され、「美味しい!!!」なんていうレストランに行った日には、目ん玉が飛び出るお会計が提示され、そこにチップを上乗せしなければならない。
チップ、チップ、何はともあれチップである。
私は学生ビザなので働けない。働くことができない。
他人にチップを払っている余裕はないのである。
ということは、つまり「自炊をする」しかない。
料理を作ることは好きなので、ほぼ毎日のように自炊をした。
途中から何のためにカナダに来たのかわからなくなってきた。
最終的には、ひじきとか炊き出して完全な日本での生活を再現しているというか日本にいる時より日本、日本している。
途中からオーナーの分のご飯も作ったり作らなかったりいろいろである。
そしてついには、こんなものまで手を出してしまうのである。
もう外食の必要はない。
家でとうとう食パンも焼き始めたのだ、なんのために外に食べに行くのか。
こうなったら誰か僕のためにチップを払って欲しい。
② ボランティアに参加する
ある朝、シェアハウスのオーナーが突然私に言い出した。
「次の日曜日、何してる?もし時間あるなら、ちょっと手伝って欲しいんだけど。」
特に予定はなかったし、「ちょっと」ということはまぁせいぜい半日で終わるだろうと思い、何を手伝うかよくわからないまま二つ返事で承諾した。
が、その後、上に住んでいる2人と話す機会があり、
「あーぁ、あなたもオーナーの罠に引っかかったね。遠いし、クソ寒いし地獄だよ。」
とか言われた。
私は、日曜日までの数日間、予定を作って断ろうか熱が出たとか言って仮病を使うかいろいろ悩んだが、私は善良の人である。
嘘はつけず、そのまま日曜日の朝、気がついたらオーナーの車に乗って向かっていた。
「Railway Museum Of British Columbia」と呼ばれるこの鉄道ミュージアムは、Squamish(スクアミシュ?スクアミッシュ?みたいな読み方だった)という街の外れにある。
Squamishはバンクーバー中心地から車で1時間ほどの街で、バンクーバーから遠いけどそこまで遠くないので、家を建てる人も増えてきているとか。街の中心は数本の通りが栄えているだけで、大きい街ではない。
この鉄道ミュージアムは、BC鉄道やカナダ太平洋鉄道の車両を展示しており、鉄道好きにはなかなか楽しい場所ではないかと思う。
そして、1番の醍醐味は、本物の機関車に乗れるのである。(オフシーズンがあるので注意)
さて私が何の手伝いをするかというと、この機関車を乗りにきた人たちを案内する役である。
しかし、VIP客車と一般客車で分かれているがどっちがどっちの入り口かもわからず、トイレの場所も知らず、無料のホットチョコレートがもらえるとか聞いていない私には、ハードルの高い仕事だった。
本当に英語が拙い私は、基本的に微笑むだけだった。
日中でも外気温がマイナスを下回るこの時期、寒いにもかかわらず私は英語が話せない事による冷や汗が滴り、コミュニケーションがうまく取れない辛さをあらためて感じあたのである。
この機関車乗車体験は1日に数回あるらしく、数時間おきにあの冷や汗をかく予定だったが、何だかボランティアの数が十分すぎるくらいいて、結局最初の1回で終わった。
残りの時間は、全く違うブースの溜まった水を掃き出したり、展示車両を見学したり、イルミネーションを見たり、ケータリングブースでピザやパン、ジュースなどをタダ喰いしたり、学校の宿題をしたり、ほとんど仕事をしていない。
どうせ来るならもっと仕事をしたかったが、まぁ経験は経験だ。
今になって思い返せば、この場所に行って感じたことはこれに尽きる。
「おしっこ行きたすぎたなぁ」
③ シェアハウスのお友達の集いに参加する
シェアハウス、というより仲間で住んでいる家に私が部屋を借りているという方が正しいが、みんなどの人も本当に面倒見がよく優しい。
前のブログで紹介したが、お正月の集いも参加させてもらったし、料理をそれぞれ持ち寄りで開くパーティーや、それ以外にもオシャレカフェにランチをしに行ったり、ハイキングにも行った。
いろいろ連れて行ってもらったが、このカフェに行ったときは私と比較的年齢が近いメンバーだけだった。
年齢が近いだけあって、あんなこと、こんなこと、そんなこと、ちょっと踏み行った話もできて心地よい時間だった。
1つだけ後悔が残るのは、数ある美味しそうなメニューの中から、卵と草だけのお腹が満たされないランチをオーダーしてしまったことくらいである。
この日はハイキング。
ここは「ライトハウスパーク」という、バンクーバー中心地の対岸にある公園。
山登りほど急な坂があるわけでもなく、敷地内を周回しながら海も森林も楽しめるスポットだ。
この日は、前日まで雨予報だったが当日はご覧の通りの素晴らしい天気。
「私の日頃の行い」と言いたいが、日頃誰かに良い行いをするほど何もしていない。
でも、まぁいいや、これは私の日頃の行いの結果である。
④ オーナーの洋服をコーディネートする。
「服を整理したい」と言い出したオーナー。
年齢こそ私よりまぁまぁ年上だが、見た目はすごく若々しい。
しかし、洋服に関してはめっぽう弱く、日本に帰った時に、彼の友人に頼んで数パターンの組み合わせをコーディネートしてもらい、カナダに持って帰ってきて、常にその同じパターンで着回すそう。
そして、幸か不幸か物持ちが大変良く、何十年も蓄積された洋服がクローゼットにみっちり入っており、「いつか着ると思う」などと言い、捨てられないらしい。
その洋服たちが、また刺激的なデザインの洋服が多く、これは完全に彼の友人のテイストなんだと思うのだが、朗らかな当人のイメージとはかなり対極にある洋服が多いのもまた事実である。
そして本人も「ローライズのスキニーが好み」とか難しいことを言うのだが、彼は何が言いたいかというと、洋服を整理して、私にコーディネートをして欲しいと言うのだ。
私のスタイルは正直彼のスタイルとは違う。
どちらかというと、ゆったり目で、決してローライズのスキニーは履かない。
それを踏まえた上で、彼に「私のスタイルになってしまうけど、良いのですかい?」と確認し、
「YES」
と言うのだから、それは好きにやらさせてもらうとしよう。
後日、私たちはアウトレットに向かい、洋服を探した。
「私に任せる」と言っても、お金は彼が払うし、彼がどうしても着たくないものもあるだろうし、洋服選びはなかなか難航したが、ひとまず2〜3パターンで組み合わせを変えても着れるようなものを購入した。
ご覧の通り、特に奇抜ではない、どこに行っても馴染みそうなスタイルにした。
「オシャレ」かどうかはわからないが、年相応のスタイルにはなったと思う。
後日、彼の友人たちとの集いがあったため、新調した服でオーナーは意気揚々と出かけ、私もその集いに参加したが、誰1人彼の新しい服には声をかけなかった。
「良いとも悪いとも言われない」と言うことは、ある意味馴染んだ証拠だろうか・・・
あんまり深く考えないことにしようと思う。
以上のような、穏やかな出来事しかなかったが、それ以外にも、一緒に日用品を買いに行って、フルーツや野菜をシェアしたり、オーナーのつぶやきをひたすら聞いたり、シェアハウスみんなでご飯を食べたりと、やっぱり穏やかな出来事しかなかった。
だけど、今思い返すとかなり楽しんでいたと思う。
日本にいるだけでは、きっと経験できなかったことがたくさんあり、この先の人生に役に立つだろう。
例えばこんなシチュエーションも。