家探し

学校がスタートし、ホームステイの飯の不味さにも慣れてきたが、家探しはそう簡単にはいかない。

学校生活開始2週間での集合写真。まだこのクラスは終わりではないのに、なんで撮ったのかわからない。

毎日、来る日も来る日も学校から帰れば家探し。

夕食を食べては家探し。

村上と談話をした後も家探し。

常に「家探し」から追われている。

「家探し」が終わらない限り、もやもやした気持ちは晴れない。

そんなある日の夜、家探しをするも収穫がなく、もやもやしたまま寝床についた。

憧れだった「英語で会話する夢をみる」ことは一切できず、普通の睡眠時間だけが流れ、朝4時ごろのことである。

突如すごい音と共に私の体に衝撃が走った。

なんと身動きが取れない。

「地震・・・?」

と寝ぼけながら「カナダで地震ってあるっけ?んじゃ津波?いやいやここは内地だし・・・」

などと呑気に考え事をしていた。

結果は、「ベッドが抜け落ちた」である。

しかもベッドの真ん中が抜けたので、私とマットレスは「くの字」に折れ曲がり、スタイリーみたいな格好になった。

実際は掛け布団もしてたよ。
47年前に流行ったみたい。効果あるのかな。
呆然と底板を見つめる。

全く動きたくなかったが、このまま寝れるわけがないのでクソ重いマットレスを動かし原因を探す。

マットレスの下にはベースとなるスノコ板が敷かれているのだが、これが固定されておらず寝返りなど少しの振動で抜けるのが原因だった。

その後薄暗い朝の中、底板を直す。だが固定箇所が壊れているので、スコスコ動きお話にならない。

「どうせ1ヶ月だけで出ていくし我慢するか」ということで慎重にマットレスを戻し、なかったことにした。この後の残り半月は寝返りを打てない生活が続くのである。

「刺激的な食事」に「聞こえてくる会話はおおかた中国語」、「シャワーは徐々に水になってくる」し「おまけにベッドの底板が抜ける」のである。

まだ1週間と少ししか経ってないが、次の家を見つけないと体がついていけなさそうだ。

ところで本題の家探しだが、私は基本的に掲示板等を利用して探した。

学校のクラスメイトなんかも聞いたりしたが、そうタイミングよく見つかるものでもない。

ちなみに以下が私の使用していたサイトである。

・JP Canada(ジェーピーカナダ)

https://www.jpcanada.com/

(日本人コミュニティがメインのサイト。日本語で投稿されているものが多く、日本人オーナーや日本人とのシェアが多い印象。海外生活が初めての人には安心かも。)

・Craigslist (クレイグズリスト)

https://vancouver.craigslist.org/search/hhh

(おそらくカナダでは1番ポピュラーなサイト。投稿数や更新頻度は多くみんなが使用している印象。基本は全て英語だが、日本語サイトに変換できるので英語ができなくても大体の内容は把握できるはず。)

・Kijiji(キジジ)

https://www.kijiji.ca/h-vancouver/1700287

(これは友達から教えてもらって使用していたサイト。こちらは全て英語で、クレイグズリストと比べると投稿数は劣る。ただ、どのサイトを使用しても良い物との巡り合わせは「運」なので、使用する価値はあると思う。)

その他、日本では使えないが「Facebook Market Place」という、個人でシェアハウスを投稿していたり、物を売り買いできるサイトがある。こちらを使用して探している人も多かった。

また、私が滞在していた当時の家賃の相場はおおよそ「$500〜$750/1ヶ月」であれば良い方だった。だが、年々家賃が高騰しており、それ以上の家賃を払っても郊外に住むしかない人も多くいた。また、ボンド(敷金みたいなもの、退所時に問題なければ返金される)も0.5〜2ヶ月分を最初に支払うことがほとんどなので、ある程度金銭の余裕は必要である。

そして気をつけてほしいのが、サイトを探していると極めて安い物件(〜$400で中心地にある)も出てくるが、住み始めるとぼったくられたり、酷く汚かったり、投稿内容と異なる設備だったりすることも多い。

安い物件が必ずしも悪いわけではないが、どの物件も「必ず内見のアポイントメントを取って、住めるところかどうか確認する」ことを推奨する。

オーナーがどういう性格か、シェアメイトはどんな人か、設備は写真通りか等、必ず自分の目で確認しないと後で後悔する可能性が高い。

上記のことを確認しながらこれらのサイトを来る日も来る日も見続け、メールを送ったが返事がないことも多くうまく見つけられなかった。

そうして迎えたカナダ滞在2週目の中頃である。

JP Canada にて素晴らしい物件があった。写真で見るその家は外観こそ少し年月を感じるが、中はリフォームされているらしく、すこぶる綺麗。

しかも家賃は$550と、この時期で考えると破格に近い。場所はダウンタウンから電車と徒歩で25分程度で、憧れのゾーン1である。

勇気を出してメールを送ると、すぐに返事をもらえた。

オーナー「今週末で内見どうですか?」

私「伺います全力で(とは言ってないが気持ちはそんな感じ)」

そして週末。私は楽しみ過ぎて1時間も早く最寄駅に着いた。

駅の近くには大きなスーパーがありそこで時間を潰すことにする。11月も半ばになってくると外で待つには寒過ぎて辛いのだ。

日用品も揃う大きなスーパー

店内はかなり大きく、スーパーの雰囲気だが倉庫感もあり、全てを見るにはかなり時間がかかりそうだ。

だが、店内が思いのほか暖かくないというか外気温に少し色付けした程度の温度で、中は中で寒いのである。

暖は取れない

入店して15分、寒過ぎて店内を散策するどころか、ただトイレを探すだけが目的になってしまった。

だが、どうやってもトイレを見つけることができない。

限界だった。どうしようもなく辛い。

そこで、近くの他の施設を調べると、5分ほど歩いたところに別のスーパーを見つけた。

そう、調べてわかったが、この最寄駅はレストランやファストフードこそ無いが、謎にスーパーが3軒並んでおり、もし生活するのであればこの上なく便利である。

だが、便利かどうかは今どうでもいい。

今ここで漏らして今後出禁になるのだけは大人として避けたい。

そうして股を擦りながら別のスーパーへ向かう。

顔は悲壮感が漂い、寒さと尿意で私の顔から色が消えていた。

入店する。

あった。。。

天国だった。

こちらはこちらで大きいスーパーだが、さっきのところよりかは暖かい・・・気もする。

とりあえずトイレが終了したら、あと30分ほどスーパーで時間を潰し、いよいよ内見場所へGOだ。

午後3時。

言われた場所に到着した。

出迎えてくれたのはオーナー本人である。

この家は1軒家で、1階と地下で構成されており、1階に2人と犬が1匹、地下にオーナーとシェアメイトが1人という振り分けだ。

1階と地下は分かれていてキッチンやトイレ、お風呂などもそれぞれ完備されているが、1つの階段でつながっているため、犬はおやつの時間になると遊びに来たりするらしい。また全員が長い付き合いの人たちなので、定期的に交流もあるそう。

写真通りの綺麗な部屋で、自分専用の洗面台もある。

地下だが、完全な地下というわけでは無いので、リビングには窓もあり陽の光は浴びれる。

自分の部屋は完全に囲まれているため真っ暗だが、調光可能なライトや勉強机、綺麗なベッドも完備。

トイレットペーパーや洗剤、調味料なども全て使っていいとのことなので、これが$550で全て含まれているとなると、こんなに良い物件は今そうそう見つけられない。

ただ、自分にとって問題なのが、「駅から家まで15分ほど歩かないといけない」ことと、「全員が日本人である」ということである。

特に後者は1番恐れていることだ。

ただでさえ苦手な英語を、家に帰ったらおそらくほとんど話さなくなる。

1日のうち、半日は英語で話すが、半日は日本語になってしまう。

本当に英語を向上させることができるか・・・

どうするべきか・・・

そんなことを考えながら、オーナーと話をしていた。

オーナー「どんな感じ?」

私「めっちゃくちゃいいです」

オーナー「君以外で内見したい人もたくさんいるから、もし少し考えたいなら他の人に決まっちゃう可能性もあるね」

私「そうですよね・・・正直にいうと、日本語での生活になってしまうのだけが心配で。英語勉強しに来ているのに、向上しなかったらどうしようっていう」

オーナー「まぁ学校行ってるし、英語でわからないこと聞いてくれたら答えてあげられるよ。英語だけの会話にしてもいいけど。笑」

私「いやまぁ、皆さん家では日本語での会話が落ち着くんでしょうから僕のために合わせなくていいですけども・・・」

オーナー「さぁどうする、今すぐ決めるなら君の家になるけど。笑」

私「・・・」

迷う。

英語を向上させたい。

けれども、リーズナブルな家賃で人が良くて、ここまで心地良さそうな場所を私は知らない。

というか初めての内見なので本当に何も知らないのだが、このタイミングでこの物件を逃すのは惜しすぎると心が騒いでいる。

私「決めます、ここに」

なんと決めてしまった。

カナダに来てものの2週間である。

見つけるのに苦労している学校の生徒たちを横目に、私は決めてしまった。

これで肩の荷が降りる。

「住む場所が決まっている」ということがどれだけ人を安堵させるか、私はこの時初めて知った。

後日、ボンドと最初の月の家賃を支払い、無事に契約が完了したのである。

Follow me!

家探し” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です